◆Maison de Clair◆

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りゅりゅのにゅういん 10:10
りゅりゅは2キロと小さめな上に黄疸が出てしまって、NICUに入院になりました。


りゅりゅの母親の長女子も、NICU出身です。

30年近く前
難産で生まれて、そのあと大学病院のNICUに長女子は入院しました。

産院をひとりで退院した私を、そのまま車で父が大学病院まで連れて行き、
ずらりと赤ちゃんがコットに寝かされて並ぶさまを
ガラス越しにふたりで見ました。

私の娘はどこだろう。

夢中で赤ん坊ひとりひとりを食い入るように見つめる私の横で

「あれじゃないか?」

とさらりと父が、一番奥で裸で目をサングラスのようなもので覆われて
光を当てられている赤ん坊を指さしました。

「そうかな?」

と父の言葉を信じずに、コットをひとつずつ見て確かめている私の横で
父はまっすぐに、裸にサングラスの赤ん坊だけを見ていました。


何十人もの赤ん坊の中で、父が指さした赤ん坊は、長女子でした。

黄疸が出て処置をしてるから、今日は会えませんよと、看護師さんが教えてくれました。


「なんでわかったの?顔も見えないのに?」


私が聞くと


「ヤスヒコの赤ん坊のときにそっくりだったから」


と鼻をぐずぐず言わせながら父が答えました。

ヤスヒコは父の10歳下の弟です。

サングラスに裸の赤ん坊のどこが叔父に似ているのか

私にはさっぱりわかりませんでしたが

父の目には、若かった祖母が自宅で産んだ、小さな弟と私の娘が重なったのでしょう。

私の目には、小さなりゅりゅが、あの日の長女子と重なります。




黙ってわが子を見つめるオムコくん。
男同士はいいものですね。

離れていても家族はひとつなんだよ。
 
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檸檬の木 22:31
数年前、実家の庭の松の木の裏に、父が檸檬の木を植えました。

花が咲く木も、実がなる木も

「庭が汚れる」

と言って、嫌がる母の言葉に耳も貸さず
檸檬の木だけではなく
赤い実のなる千両やら万両やら手当たり次第に植えた父。

今日見たら、赤い実は鳥にみな食べられていました。



私があげたクリスマスローズは、いつの間にか大きな株になっていて
白い額が、いくつもうつむいていました。

その横では、水仙が、緑の首を伸ばしています。
梅のつぼみも、桃色にほころんで、春を待ちわびているよう。


松の木の裏の檸檬の木は、黄色い大きな実をいくつもつけていました。

思いもかけず、鋭い棘に戸惑いながら、私は檸檬の実をもぎました。


家のことなど、何一つしなかった父でしたが、年を取ってからは

「お庭番」

と自分のことを呼んで、毎日庭仕事を楽しんでいました。



「檸檬をちょうだい」


家の中から言うだけの娘のおねだりに
大きな黄色い檸檬の実を、棘も構わずもいで
その実をふっくらした手に握りしめて

私に差し出した父の笑顔。



檸檬を差し出しながら

「いい庭だろう。見ておいで」

そう言われても

「また今度ね」

と家の中から眺めるだけだった父の庭。


黄色い大きな檸檬の実。
手で包むと、お日さまのぬくもりと
父の掌の温かさ。


ひとつ、もいでは袋に入れ

またひとつ、もいでは袋に入れ。


松の木の裏に、檸檬の木なんて植えちゃって。
ばかだなー
お父さん。



主のいない庭で、時折、棘に手を引っ込めながら黙々と黄色い実をもいでいく。

青い空に黄色いいろが、清々しく。

手の中の檸檬の丸い優しいかたちが悲しく。

胸は震えているが、春のように暖かく。


もいだ檸檬の袋を下げて、メジロが食べたみかんの皮を拾い
家の中に入ると、母がひとりでテレビの前に座っていました。


「檸檬はたくさんなってた?」


実のなる木が嫌いな母が子供のような口調で私にそう聞いてきました。


「うん。たくさんなってたよ」


私はそう答えるのがやっとでした。











 
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